
海、川、プール、日本の水辺の安全に取組む関係団体が集結!意見交換会を行いました!【後編】質疑・ディスカッション
水辺をはじめ、子どもの安全を考える活動や取り組みを行う関係者が集まって2020年10月22日に行われた、オンラインの意見交換会。海、川、プール、学校内などの枠組みを越えて、「子どもの安全」という大義の下、関係者が一堂に会するのは今回が初めて。各自が取り組んでいる活動の紹介や解決すべき課題、そしてこれからの展望について、知見の共有と意見が交わされました。
「【前編】活動報告プレゼンテーション」に引き続き、質疑・ディスカッションの模様をレポートとしてまとめたので、ぜひご覧ください!(各出席者の発表内容について詳しく知りたい方は、ぜひ「【前編】活動報告プレゼンテーション」ご覧になってみてください。)
【出席者】
ファシリテーター:
吉川優子/一般社団法人吉川慎之介記念基金 代表理事
稲垣良介/岐阜聖徳学園大学教授
大野美喜子/国立研究開発法人産業技術総合研究所人工知能研究センター NPO 法人 セーフキッズジャパン理事
小川恭子/株式会社さとゆめ 海と日本プロジェクト事務局 海のそなえ推進プロジェクトチーム
大井里美/川に学ぶ体験活動協議会(River Activities Council)
菅原一成/公益財団法人河川財団 子どもの水辺サポートセンター 主任研究員
田畑和寛/公益財団法人河川財団 子どもの水辺サポートセンター次長
田村祐司/東京海洋大学・水難学会理事副会長
松本貴行/公益財団法人日本ライフセービング協会副理事長・成城学園教諭 持田雅誠/公益財団法人ブルーシー・アンド・グリーンランド財団
吉村高寛/公益財団法人マリンスポーツ財団
出口貴美子/出口小児科医院長、NPO 法人 Love&Safety おおむら、日本子ども安全学会理事
西田佳史/東京工業大学、NPO 法人 セーフキッズジャパン理事、日本子ども安全学会理事
オブザーバー:
太田由枝恵/NPO 法人 セーフキッズジャパン
小佐井良太/愛媛大学教授 日本子ども安全学会理事長
渡邉泰典/仙台大学体育学科 講師
質疑・ディスカッション
西田:
参考になる事例をたくさん学べました。これらをどう広げていくかという時に、学校のカリキュラムで標準的なものを作って広めていくことが一つの方法。学校の先生方が使えるもの、さらに座学で一般的知識をつけるとともに海外のように状況ベースの学び方ができるコンテンツを今回関わっているメンバーで作ることができればいいと思います。
吉村:
事故防止の観点からすると、事故統計や調査に関する情報がバラバラなので、日本でどれだけ水難、溺水事故が起きているかがつかめない状況があります。統一されたデータ管理ができて初めて事故防止につながると思うので、統計の統一も重要なことでしょう。
吉川:
国が今、子どもに関する事故調査や検証などについて統一していく方向に向いていますが、再発防止や予防に生かせる科学的根拠をもったデータの管理、その必要性を国にもきちんと伝えていくことも大事だと思います。そうした状況も踏まえて、これからみなさんと意見交換や議論を重ねていきたいですね。
稲垣:
JLAさんの作成したコンテンツ、素晴らしいですね。新型コロナウイルス感染症の影響下で水泳がないから事故が増えるんじゃないかという話も出てきましたが、こういったコンテンツが使える状況であれば、それを周知することも重要だと思いました。
松本:
学校の水泳授業に求めるものについて、保護者の声に耳を傾けることも、とても大切だと考えています。
吉川:
今日みなさんにお話しいただいた活動を地域や学校の方、社会全体に認知していただきたいですね。学校の教育は地域との関係性が深いので、保護者にも届く機会になります。
それぞれの団体の活動やきちんとしたプログラム、教育カリキュラムがあることを提案する、知る機会が必要だと思います。
吉川:
今回はそれぞれの団体の活動について情報共有をするという会ですが、全体的な方向性としてはどのように考えていらっしゃいますか。
稲垣:
皆さんのコンテンツを授業などで共有させていただきながら、世に問うていくことが私にできることかと思います。
大井:
川に学ぶ体験活動協議会(River Activities Council、以下RAC)も、川の安全について学ぶ機会について、学校での水辺の安全教育は重要だと認識して活動しています。教育プログラムの標準スタンダードとして、何をスタンダードとするかですよね。例えば、川、海で使うライフジャケットが違うように、シチュエーションによってライフジャケットの統一はむずかしいという側面もあります。
菅原:
海や川などの異なるフィールドを対象とした統一教材の作成にはいろいろな課題がありますが、共通の部分も多いと思います。今回を機に、いろんな団体のプログラムや取り組みなどをうまく全国的に広められることができればよいと思います。
田村:
新型コロナウイルス感染状況により、来年度の小学校におけるプール授業の実施がどうなるかわからない中で、水辺安全に関する知識についての講義教材を作ることも必要だと思います。
吉川:
まずは、来年の夏を迎える前に、皆さんと一緒に、水難事故を予防しようというメッセージと、それぞれの活動や教育プログラムなどに関する情報発信ができたらいいなと思っていますが、その点についてもご意見をいただけますか。
松本:
まず大事なのは、アクションを起こすことです。2020年の水難事故の増加を受けて、あらためて教育が必要だと。ライフジャケット未着用の事故も多かったように思います。これを機会として組織の垣根を越え、一つになり、オールジャパンで発信し、学校教育を巻き込んでいくことが大事なのではないかと思います。
持田:
B&Gでは、協力いただける学校を選んで、背浮きの指導などの教員研修をやっています。研修で学んだ人達が指導方法を共有していくことで、全国に伝播していくのではないかと思います。
吉川:
指導者をどう養成していくかも教育の部分だと思いますし、とても重要ですよね。そうした教育は、子どももそうですが地域社会にも投げかけていく必要があると思います。
吉村:
そのためにもカリキュラムのスタンダード化が大事だと思います。マリンスポーツ財団では、アメリカのウォーターセーフティサミットを真似て日本版を開催していますが、そういった所も機会にしていただいて、各取り組みを発表したりするのもいいのではないでしょうか。
吉川:
安全な水辺の活動を提供していこうという所に向かって、皆さんと一緒に考えていければと思いますので、これからもぜひよろしくお願いします。今日は貴重な機会をいただき、本当にありがとうございました。
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水辺と子どもの安全を目指す同志が一同に会した、今回の貴重な意見交換会。取り組み現状だけでなく、情報の統一化や水難事故予防の認知向上など、私たちの前に今立ちはだかっている課題について、詳しく知ることができたのではないでしょうか?
今回の意見交換会を礎として、海のそなえ事務局も引き続き、各団体の今後の動向に注目していきたいと思います!