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海苔養殖にSUP体験、潮干狩り…そして遂に大型イベントも開催!須磨の海を豊かにするべく奮闘している漁師さんのディープな話を聞きました

2022年の夏は外出する人が増え、海、陸問わず、野外イベントの開催も散見されましたね。そこで今回は、豊かな海を守るためにイベント活動に意欲的に取り組んでいる、すまうら水産有限責任事業組合の代表 森本明さんのインタビューをお届けします。実は、このすまうら水産さん、海苔を中心に水産関連事業を営む企業なのですが、一方で一般の方が参加できる、さまざまな海関係のイベントを実施しているというユニークな団体さんでもあるんです。活動内容だけでなく、その活動の裏にどんな想いをお持ちなのか伺ったので、早速ご紹介していきます!

森本 明
すまうら水産有限責任事業組合 代表。須磨で生まれ育ち、大学在学中に家業であった海苔の養殖業を継ぎ、2014年にすまうら水産有限責任事業組合を設立。現在、漁業に限らず、海にまつわるさまざまな取り組みを展開している。

約60年間で漁業のおよそ90%が消滅…激減する漁業への危機感から会社を設立

ー会社設立の経緯を教えてください。

私の家は漁師の家系で、先祖はこの須磨という場所が村だった時代から漁業を行っていました。この地域も昭和30年代頃までは約70世帯が漁業を営んでいましたが、50年代には半数になり、近年は遂に一桁台と年々減り続けている状況でした。私は大学在学中に家業を継ぎ、地域の漁業の危機的状況を目の当たりにして「地域全体で漁業を守っていかなければ」という想いから、2014年にすまうら水産有限責任事業組合を立ち上げました。

ー会社には今どんな方達がいらっしゃるのでしょうか?

漁業を継続させることが一番大事ではありますが、人手は減っていく一方というのが現状です。私たちは、いかに効率を上げて業としてやっていくかが継続のポイントと考え、漁業以外の仕事を作ったり、一子相伝という従来のシステムではなく漁業をやりたい人を外から新たに募ったりするなど、新しい漁業の形をつくろうと試みています。当社も社員11名のうち、漁師の家出身は3名のみ。他の社員の中には「海が好きだから一緒に漁業がやりたい」という想いを持った群馬県や滋賀県など、県外出身の者もいます。

ー同じような想いを持つ人達が全国から集まった会社なんですね。事業はどんなことに取り組んでいるのでしょうか?

メイン事業は、昔から取り組んできた海苔の養殖業です。ただ、海苔の養殖のシーズンは主に冬なので、養殖をしない時期はサーモンの水揚げや潮干狩りを行っています。昔は須磨海岸も貝がたくさん採れたのですが、今は他から持ってきて浜辺にまいて皆さんに潮干狩りをしていただいています。海にある貝を自ら採って食べていただき、海に親しむとともに海のありがたさを知っていただく場を提供できればと思い、取り組んでいます。

また、SUPの体験レッスンや須磨海水浴場でパラソルや浮き輪の貸出をしたり、直売所を出して海水用品や水産物の販売などを行っている他、今は新たな事業として真珠の養殖にも乗り出しています。神戸は「パールの街」ともいわれていますが、産地ではありません。二枚貝はプランクトンを食べてくれるので海の洗浄にも役立ちますし、自分たちで作ってみようということで始めることにしました。

「豊かな海を見せなあかん」。想いが高じて始動した、地域を巻き込む一大プロジェクト

―今開催中の「Suma豊かな海プロジェクト2022」は、そうした取り組みの一環で始めたのでしょうか?

「豊かな海を見せなあかん」と常に声を上げていますが、これをしたら海が豊かになるという一つの答えはないんですよ。我々は開発地帯で漁業をしているので、自然のものを人工的に変えることで生まれる弊害を実際に感じています。何億年という年月をかけて川や河口ができ、海ができ上がったのに、埋め立てをするとものの10年で環境が変わってしまいます。今、海が非常に疲れてきている状態です。「工事があると漁業補償が出ていいじゃないか」とおっしゃる方もいますが、私たちはそういった補償をいただくなら豊かな海を守るためのプロジェクトに費やすべきだろうと思ったんです。行政さんからの回答は時間を要してしまうので、待っているよりも即行動しようということで、想いを共有する「須磨里海の会」と特定非営利法人「神戸海さくら」の皆さんと一緒に、須磨の海を豊かにする活動としてこのプロジェクトを始めました。
 
偶然にも今年は11月に兵庫県で「全国豊かな海づくり大会」という漁業会の一大イベントが行われる予定なので、自分たちの活動をPRしていくにはいい機会だと思い、このタイミングでの開催を決めました。

―プロジェクトでは、いろいろなイベントを開催されているようですが、具体的に内容を伺えますか?

須磨里海の会、神戸海さくら、そして私たち、すまうら水産で分担しながら、大枠として3つのイベントを行っています。

須磨里海の会さんは主に小学生を対象に、海の生き物や自然についての講義や海のものを食べる体験の機会を与える里海教室、そして神戸海さくらさんはビーチクリーン活動ですね。夏の間は海水浴客も多く来られるので、海を汚さない啓発活動をしながら取り組んでいただいています。
 
また、私たちは海水浴ゾーンを禁漁区にして傾斜灘を作るなど、魚が住みやすい環境づくりを進めながら定点観測を行っています。水質や生物の状態は一瞬で良し悪しを判断できず、それこそ長期間データをとって変化を見る必要がありますが、世の中にはそういったデータが非常に少ないので、まずは自分たちがやってみようということで取り組んでいます。それから、私たちは毎年わかめのオーナー制を行っているのですが、オーナーになってくださった方々がわかめの株付けや刈り取りのできるイベントもプロジェクトの一環として開催予定です。このオーナー制は、申し込み受付をすると数時間で枠が満杯になってしまうほど人気があるので、プロジェクトの一大イベントの一つになるかと思います。

―イベントには、どんな方が参加されていますか?

やはり海に関心のある方が多いですね。ビーチクリーン活動をやる際は海洋生物の観察や須磨でとれたあさりを食べる会などのイベントも一緒に開催しているのですが、楽しみがプラスされているためか参加者も多いです。須磨里海の会さん主催のイベントは、熱心に海の話を聞いたり、海の生き物に興味を持ってくれたりするようなお子さんの参加が多いようです。「この子達が将来海の研究者になってくれへんかな」とこちらが思わず期待してしまうほどですよ。
 
―本プロジェクトをはじめ、現在行っている取り組みがどんな価値を生み出せるものだと感じていますか?

漁業を営む業者は、個人営業の所が多いので、一般の方向けに訴える活動に費やせる時間の余裕がなかなかありません。だから、できる人がやっていくのがいいのではないかと思っていて、この点でいえば我々は貢献できているのかなと感じます。

―取り組みを続けていく中で、業界内でも海を大切にする意識がより育まれていきそうですね。

漁業者の皆さんも魚が獲りにくくなった、海が変わった、生物多様性が崩れているという実感を持っていますから、もともとの豊かな海に戻さないといけないという意識は、業者間でも広がってきていると思います。

私たちの活動を通して、まずは海を知り、自然の大切さを知ってほしい

―一連のプロジェクトを通して、世の中に一番伝えたいことは何ですか?

海に興味を持ってほしいんですよね。今、海のことを知らない人が多すぎると感じます。だから、プロジェクトに参加していただくことで、まずは海に興味を持って魚を食べていただきたい。そして、その先にある自然の大切さを認識していただきたいと思って、活動を行っています。

―今後、やってみたいことはありますか?

プロジェクトに関しては、各団体の取り組みをより広めていきたいと思っています。イベントでは、神戸のミュージシャンのチキンガーリックステーキさんに本プロジェクトのテーマソングを作っていただき、開会式で披露していただきました。10月にはそのCDをできるだけ多くの方に配布する予定です。いろんな方に私たちの取り組みを広めて、それぞれ自分ができることをやってもらえたらいいなと思っています。だからこそ、まずは業者がアクションを起こし、それを市民の方々に応援していただく。そんな理想の形をつくるためにも、私たちが先駆となって引き続き、取り組みを進めていきたいです。今は活動の企画から実施まですべて自分たちだけで賄っている状況なので、いろんな方に広めて活動を理解してもらい、後押ししていただけたらうれしいなと思います。
 
私もあと一年で60代に入るので会社の代表は交代する予定ですが、このプロジェクトについては来年も担当したいと考えています。海を豊かにする活動を通して、若い世代に海の大切さを伝えていくこと。これをライフワークとして、がんばっていきたいと思っています。

最後に、漁業のプロフェッショナルである森本さんの「海のそなえ」を教えてもらいました!

まずは、天気予報の確認ですね。私たちも沖に出る時は風の方向や気圧配置に気をつけています。あとは、ライフジャケットの装着といった自分のできることですよね。特に私たちは仲間で仕事をしているので、誰か一人でも怪我をすると非常に困りますから、安全の確保はしっかり行っています。当社は海水浴場での事業も行っているので、ライフセービング協会さんと連携を取りながら、危険な状況を作り出さないようにするためにも、波が高ければ今日は沖の方へ行くのをやめるなど、早めの判断を心掛けるようにしています。海はちょっとした油断でも大惨事が起きる場所です。そんな危険な場所なので、日頃から社員でAEDの講習を受けたり、AEDを設置したり、日頃の訓練もしっかり行うようにしています。

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海に長年携わってきたからこそ、見える現実や抱く懸念なども多々あるのだと思います。それらを自分の内だけにとどめずに、自分なりに形にして外へと発信していくことの大切さを改めて感じたインタビューでした。取り組まれている活動は、みんなが参加できて楽しめるものばかりなので、ぜひ皆さんも参加してみてくださいね。

記事に出てきた気になる情報はこちら!
 
すまうら水産有限責任事業組合
https://sumaurasuisan.jp/
Suma豊かな海プロジェクト2022
https://sumaurasuisan.jp/yutakanaumiproject2022/
須磨里海の会
https://suma-satouminokai.webnode.jp/
神戸海さくら
https://k-umisakura.com/


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