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障がい者向けサーフィン体験を実施。インクルーシブな社会を目指す活動がもたらしてくれる“お金では買えない幸せ”

鎌倉には海を舞台にさまざまな活動をされている人、団体がたくさんありますが、今回は障がいや疾患を持つ方がサーフィンを体験できる活動を展開する、ボランティア団体Nami-nicationsさんをご紹介します。障がい者を対象とする活動を始めた経緯や、先日開催した大型イベント「鎌倉インクルーシブビーチフェスティバル2022」をはじめとする活動にふれながら、Nami-nicationsさんが活動を通して目指すこと、世の中に伝えたいことについて、代表の柴田康弘さんにお話を伺いました。

(プロフィール)

柴田 康弘
Nami-nications 代表。2021年、神奈川県鎌倉市かまくらボランティアセンターにボランティアグループとしてNami-nicationsを登録・設立。神奈川県由比ヶ浜海岸を主要拠点に、ビーチクリーン活動や障がい者もサーフィンを楽しめるインクルーシブ・サーフィンなどさまざまな取り組みを展開している。

サーフィン好きが出会い、想い合い、自然発生的に生まれたNami-nications

ーNami-nications設立の経緯を教えてください。

私は12年前に鎌倉に来てデイサービスの経営をしていますが、仕事を通じて出会う介護関係者や医療関係者でサーフィンが趣味という方がすごく多かったんですね。それで相手がサーファーだとわかると仕事の話はそこそこに波の話になって、すぐに友達になれるんです。そうやって知り合った人達に声をかけて集まって、次第にサークル活動的にサーフィンをするようになりました。それが、私たちのサーファーズケアコミュニティ「Nami-nications」の始まりです。

ー現在のような障がい者のためのサーフィン体験活動などを行うようになったきっかけは何だったのでしょうか。

活動するようになって1年経った頃、若年性認知症を患っていた川名賢次さんに出会いました。当時彼は59歳でしたが、52歳で若年性認知症を発症して以来、大好きなサーフィンも一人だと危ないからと医師から止められていた状況でした。奥さまからその話を聞いて、私たちの仲間は医療関係の専門職の人間ばかりなので、何かあったらすぐに対応できるので安心してできることを伝えて、「私たちと一緒に、もう一度サーフィンをやりませんか」と声をかけたんです。そして周囲がサポートをして、川名さんのサーフィンを再開させることができ、ご本人と奥さまからとても喜ばれました。その時、彼の長男も来られて一緒にサーフィンをしたのですが、親子で一緒にサーフィンをするのはこの時が初めてだったそうです。その場にいた全員が、とても感動しましたね。この出来事以来、それぞれが毎月集まってサーフィンをするようになりました。
 
さらに今から4年ほど前に、障がい者サーフィンの世界選手権の優勝経験を持つ内田一音さんにお会いして、彼女が開催する障がい者のサーフィン体験会の手伝いをさせてもらうことになりました。それを機に、障がい者の方ともつながりができました。会を重ねるごとにクチコミで人が増えている状況です。

病気や障がいのある人も、誰もがサーフィンをして海を楽しむために。鎌倉インクルーシブビーチフェスティバル2022を開催!

ーそうした活動の延長として、8月に鎌倉で開催した鎌倉インクルーシブビーチフェスティバル2022があったのですね。こちらのフェスティバルではどのようなことを行ったのでしょうか。

私たちとしては初開催のイベントで、二部制で行いました。第一部は、パラサーファーの方のサーフィン体験や、視覚障がいがある方や車いすユーザー、認知症の方、それから脳性麻痺がある方の4名による「障がいがあっても幸せに暮らすためには」をテーマにしたトークセッションを行いました。

そして第二部では、車いすのレゲエミュージシャンの方のライブを開催しました。彼は、レゲエの修業目的でジャマイカに行った際に怪我をして車いすユーザーとなった人物なのですが、とてもポジティブな方でそれこそレゲエのビートにのせてすごくいい歌を歌うんですよ。

イベントには、福祉関係や障がい者関係の方や近隣にお住まいで海の家で夜をゆっくり過ごそうと訪れた方など、いろいろな方が来てくださいました。

ー障がいのある方が参加されるという点で、イベント開催にあたり工夫したことや留意したことを教えてください。

医療関係者などのサポートスタッフを配置し、海関連のレジャー保険にも加入するなど、でき得る限りの対応をさせていただきました。

ーサーフィン体験をされた方をはじめ、参加された方達の様子はいかがでしたか。

数名の車いすユーザーの方が海に入られたのですが、その中にはもともとダイビングを趣味でやっていた方もいました。海に入った途端に別世界だと久々に持てた海の感覚にとても喜んでいらっしゃいましたね。

ーサーフィンの魅力は何だと思いますか。

私自身、約30年のサーフィン歴ありますが、まだまだ奥が深いものだと感じています。サーフィンをして感じる、動く波の上を滑る浮遊感や自分が自然の一部になったような感覚は、なかなか得難いものだと思います。日光浴や海水を浴びることは、体だけではなく、メンタル的にもいいものだと感じますし、サーフィンを通じて人とつながれることも本当に魅力ですよね。きっとサーフィンは、スポーツという枠を超えたライフスタイル的なものなのではないかと思います。

お金では買えない幸せを感じながら、障がい者が新たな一歩を踏み出していくきっかけを作りたい

たとえば、実際に砂浜の上を車いすで通れるのかという不安は強いようです。夏の間は、由比ヶ浜の海岸は車いすでもアクセスしやすいようにボードウォークが設置されるのですが、そこから海まで行った場合に「海辺で本当に自分に何かできるのか」という心配をされる方がまだ多いように感じます。

私たちの団体が海で活動をしていると、道路を通る車いすユーザーの方から「何しているんですか?」と声をかけていただくこともあるんですよ。活動についてお話すると、「障がいがあっていても、そんなことができるんですね!」と驚かれる方がたくさんいらっしゃいますね。

ー今回のフェスティバルの他には、どんな活動を行っているのでしょうか。

3月から12月まで月に1回、由比ヶ浜で障がいのある方がサーフィン体験ができる「インクルーシブ・サーフィン」を行っています。先日も実施しましたが、参加者の中には難病を抱えている5歳のお子さんや8歳の車いすユーザーのお子さん、また、京都から新幹線に乗って来られた車いすユーザーの方もいらっしゃいました。活動の認知が広がりを見せて、県外から泊りがけで来てくださる方もいますね。

その他にも、恩恵を与えてくれる海に感謝しようということでビーチクリーン活動なども実施しています。

ー活動を通して、障がいのある方が海とふれあう姿をたくさん見られているかと思いますが、海の効果については何か感じていらっしゃいますか。

砂浜に降り立った時から潮の香りをかいだり、日差しや風を浴びることで心がオープンになり、さらに海に入ることによって、海と一体になって癒されることもあると思います。波が高い時には波にもまれたり、巻かれたりすることもありますが、海はやはり浮力があるので車いすの方も浮くことができ、そこですべてのバリアが取り払われる感覚があるのかもしれません。みんなで一緒に波ともみくちゃになって楽しんでいると、本人もボランティアスタッフも立場関係なく、本当に一つになって喜べる感覚がすごく味わえるんですね。ボランティアスタッフについては、そういう風にみんなが喜ぶ姿を見て自分たちも幸せを感じる。それこそ、お金では買えない幸せですよね。逆に障がい者の方は「迷惑をかけて申し訳ないです」と気を遣われる方が多いのですが、そんなことを思う必要はまったくなくて。私たちもサーフィンを教えるスクールという形というより、サーフィンを一緒に楽しむ形で活動をしているので、関わる方とはすごくいい関係を続けられているのではないかと思っています。

インクルーシブなビーチから街を変え、誰もがフラットに暮らしていける社会を実現するために

ー活動をしている中で、柴田さんがやりがいを感じるのはどんな時ですか。

障がいのある方がサーフィンを体験して、波に乗りながら、満面の笑顔で雄叫びを上げて楽しんでいる姿を見ると、活動を続けてきて本当によかったなと思います。ボランティアスタッフなどもそれを見たくて集まっていますし、ご本人の親御さん、ご家族もとても喜ばれますしね。新たに波に乗れたという経験が、本人にとって新たな一歩を踏み出していくきっかけになればといつも思いながら活動をしています。

ー新たな一歩を踏み出すという活動の成果を実際に感じたことはありますか。

趣味としてサーフィンを楽しむ方だけでなく、試合に出場して本格的にサーフィンを続けたいと思う方なども出てきていますね。後者の方の中には、自分のサーフボードを作りたいという意欲的な方もいて、ボードを作るシェイパーの方におつなぎしたりもしています。こうやって人をつなぐ一つのツールや生きる上でのモチベーションを高めるものとしてサーフィンを活用してもらい、ご自身の可能性を広げていただきたいなと思っています。

ー活動を通じて、世の中に一番伝えたいことは何ですか。

インクルーシブビーチフェスティバルをはじめ、活動を通していろいろな障がいのある方々と出会い、一緒にサーフィンをすることで障がいというバリアを取り払ってみんなが一つになることができました。このようにインクルーシブなビーチからまだバリアが存在している街を変えて、みんながフラットに暮らしていける社会を作っていけたらと考えています。フェスティバル開催と同時に『Nami+(ナミプラス)』というフリーペーパーを作ったのですが、これを作った背景には「波で出会った仲間たちとより良い社会を作るためのプラスアルファの活動をして行きましょう」という想いがあります。活動を通じて、障がいがある仲間たちと新しい価値観を発信してきたいです。

ー最後に、普段から海になじみのある柴田さんから、「海のそなえ」を教えてもらいました!

まず海に入る前に、海底がどうなっているのか、どんな生き物がいるのかなど、入る場所がどんな場所なのかを知ることが重要だと思います。それから、体調を整えていくことも大切です。事前に準備運動をすることもそうですし、あとは前日には睡眠もしっかりとって、自分で体調を整えておくようにするといいと思います。
 
それから、特に大人の方に注意していただきたいのはアルコールの摂取です。海にいると開放的になって飲みたくなる気持ちはわかりますが、お酒に酔ってサーフィンをして事故を起こし、溺れて救急車で運ばれた人を間近で見てきました。自分は大丈夫だろうと思っても酔って事故につながるケースは非常に多いので、海では飲まない、前日から極力お酒を体に残さないくらいの意識を持ってもらえたらなと思います。あとはやはり海は自然なので、危険と隣り合わせの環境です。天気予報や気象情報には注意して行っていただくのが良いと思います。

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海での体験が、新たな一歩を踏み出すきっかけになる。素敵ですよね。でもそれは、まずは柴田さん自身が一歩を踏み出したからこそ、生み出せたきっかけなのだと思います。Nami-nicationsさんの活動がより多くの方へ伝わり、社会としての大きな一歩につながることを期待しつつ、これからも活動に注目していきたいと思います。

記事に出てきた気になる情報はこちら!
 
Nami-nications
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